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約束 ~禁断の恋人~
第2章 決意
脳神経外科チームは、僕を合わせて五人。
Dr.小早川はそのリーダーで、最年長の42歳。年齢より若く見えるのは、海と同じくらいの長身とDr.にしては立派な体躯のせいだろう。
「桐島……」
Dr.小早川は僕を見て驚いた表情をしてから、椅子に座っていた“Z”の肩を軽く叩く。
「ドライ。戻っていいぞ。もう寝なさい」
「はい。おやすみなさい。Dr.小早川。Dr.桐島」
丁寧に頭を下げ、ドライは私室とされている奥の部屋へ戻って行った。
ドライはドイツ語の3。移植された順番に、アインス、ツバイ、ドライと呼んでいる。
ドライは多分、20代前半らしい。夜のハイウェイで事故を起こし運ばれて来たが、病院に着いた時には既に絶命していた。
免許証も他に身分の分かる物も無く、乗っていたのは盗難車。警察も介入したが、結局半年後に身元不明者として処理された。
「聞いたよ。海くんのこと……」
その言葉に、自然と体が強張る。
チーム内で僕と海の関係を正確に知っているのは、Dr.小早川だけ。
他のメンバーには、身寄りのない海が、僕の父親の養子になったと言ってある。
Dr.小早川の実の兄が同性愛者なのは院内でも有名。今時、性的マイノリティに偏見を持つ者は殆どいない。
海がDr.小早川に僕について相談していたのは、後から聞いたが。
それでも身内の養子縁組となると、僕の父親が戸惑ったのは分かる。
「特別室にいるんだろう? 付いてなくていいのか……?」
海が事故に遭ったのは、病院関係者に知れ渡っている。それでも彼が家へ戻ったのを知っているのは、搬送を手伝ってくれた数人だけ。表向きは、特別室で延命措置を施されていることになっている。
「ドライはどうですか?」
ドライの私室の方を見ながら言った。
「相変わらずだよ……」
気を遣って笑うのを躊躇するかのようなDr.小早川に、僕の方が苦笑する。
「学習記録を、見に来たんです」
「記録はコンピーターに送って……」
途中で言葉を切り、Dr.小早川は口ごもってしまった。