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約束 ~禁断の恋人~
第1章 日常
カーテンが一気に開けられ、差し込んできた光に強く目を閉じた。
都心に建つ、父親の持ち物の80階建てマンションの最上階。
窓ガラスには有害な紫外線を遮る加工は施してあるが、朝日の眩しさは変わりない。
20世紀半ばから懸念され続けていたという大気汚染や環境破壊は、それに対する科学の発達と同時進行で、21世紀後半になった現在も状態は変わらないらしい。
「トモっ、おはよっ」
頬に優しく触れた指先に、何とか目を開けて声の主を見た。
「Dr.桐島(きりしま)。診察のお時間ですよー」
おどけた声に心の中で苦笑したが、体に力が入らなくて顔だけを彼へ向ける。
見ると、海が録画機器を向けていた。
古くなったハンディ録画機を知り合いに貰ってきて、その試し撮りらしい。
「やめてよ……」
「大丈夫。トモは寝起きも綺麗だから」
海が笑っている。
肩にかかる無造作風の漆黒の髪は、今は後ろでまとめてあった。細く顔へかかる前髪が影を作りきつめの彫りの深い顔立ちが、より印象的に見える。
「トーモっ! ホラ、起きろよ」
クッキリとした形のいい眉を微妙に歪めて笑う彼に腕を引かれ、僕はベッドに体を起こした。
彼は桐島海(かい)。僕、桐島朋也(ともや)の最愛のパートナー。
一緒に暮らすために、僕達が決心したのは一年半前。
海の両親は既に他界していて、親類もいない。僕には元々母親がいないから、僕の父親だけに二人で頭を下げた。
元々片親がいないのは、珍しくない。
誰でも利用出来るシステムで、卵子バンクにある女性の卵子を買い取り、体外受精で子供を作る。勿論その逆に、精子を買い取って子供を作る女性もいる。
だから僕が育ったのは特殊な試験管の中で、母親の胎内じゃない。
婚姻相手がいなくても僕の父親は同性愛者ではないらしく、僕と海の件もすんなりとはいかなかった。
交際自体を隠していたため、父親は寝耳に水といったところ。