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約束 ~禁断の恋人~
第2章 決意

情報は何でもコンピューターで入手出来るが、マニアは本として持っておきたい。
部屋の隅には、バイクのパーツらしい銀色の金属。本棚に並んでいるのは調理師用の月刊誌で、“栄養”や“自然食品”という文字が目に入った。
数少ないが、専門誌は色々と発売されている。
医療系の物もあり、紙を捲る感覚は気持ちいい。
「着替えるから、脱いで?」
言ってから、海を見つめてしまう。でもすぐに手術着を脱ぐ彼から視線を逸らして、クローゼットを開けた。
二週間ほど前に二人で街へ出かけたことを思い出す。
いつも家にばかりいる僕は、デートだと言う海に連れ立出された。
外食をしたり、ただ街を歩いたり。それだけでも、一緒なら楽しかった。
その時に買った、薄手のトレーナーを出す。
僕も海も服には特に拘らないが、あの時は二人ともデザインが気に入って購入した。マンションへ戻ってから、少し前にネットで買った僕のシャツと色目が合っていたのに、2人で笑ったのを覚えている。
「シャワーは、明日まで我慢して?」
ジーンズと下着を揃えて海へ渡した。
服を着る間俯いていて、「これでいい?」という言葉に顔を上げる。
海が……。僕の愛する海が目の前にいた。
しがみつきそうになるのを、何とか堪える。
彼は海じゃない。姿形は同じでも、海とは違う……。
「着方、間違ってる?」
「ううん。大丈夫。似合ってるよ……。凄く……」
少しの間、彼を見つめた。男らしい海の顔を、逞しい体を。
「ごめん……。すぐ、食事にするから……」
海を促し部屋を出て、ダイニングへ着かせた。
食事に関して全て海に依存していたせいで、僕に用意出来る物などたかが知れている。
フリーズドライのパスタを熱湯で戻し、同じフリーズドライのボンゴレソースと和えた。
温野菜とオニオンスープは、封を切るだけのバイオ食品。熱源が付いていて、開けるとどちらも勝手に温まる。
僕にしては手際よく出来たのは、よく海の料理を眺めていたからかもしれない。勿論海は、フリーズドライやバイオ食品は使わなかったが。

