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約束 ~禁断の恋人~
第3章 倒錯
頭の上で聞こえる声に首を振ったが、カイに抱き上げられ、驚いて顔を見た。
「大丈夫?」
ベッドへ降ろされて、カイを見つめる。じっと見つめ返され、一度強く目を閉じた。
「僕を……。抱いて……」
「ダク?」
意味が分からない様子の、カイの腕を掴んだ。
「セックス、しよう……」
ほんの少し、カイの眉が動いた気がした。
成人男性の知識として、チップにはセックスに関しても入っている。でもそれは、中学生用の性教育の本から引用したもの。
子孫を残すためと、精子、卵子バンクについてなど。
何も知らない“Z”のためにと、自慰についてもメンバーが追加した。
“Z”は、異様な学力を身に着けた子供のような存在。
「オレもトモも、男だよね。セックスは、男女でするものだろう?」
「知識に、あるよね。同性愛者に、ついても……」
現代では、珍しくない性的マイノリティー。
堂々と腕組んで街を歩く同性同士も、好奇の視線を浴びたりはしない。
ゆっくりと頷いたカイを引き寄せ、肩口に額を着けた。
「僕は、カイを愛してる。カイも、僕を愛してるんだよ……」
自分へも、カイへも言い聞かせるように言葉にする。
「アイ……」
呟くカイの、吸い込まれそうな漆黒の瞳を見つめた。
『絶対にトモを幸せにする』
海の言葉を思い出すと、胸が痛む。
恥ずかしそうに、でも一所懸命に言ってくれた。
それがたった一年前。
楽しい毎日はあっと言う間で、昨日のことのようにも思える。
「言ってくれたのに……。なのに……」
自分からキスをした。
軽く開いたままの隙間から舌を挿れ、彼の舌に絡める。
確かな熱。それが、僕から現実を奪っていく。
「んんっ……」
海は舌を動かさないが、首に腕を絡めて熱を感じる。
少ししてから離れ、彼のバスローブを脱がせた。
この逞しい体は、僕を愛してくれるはずなんだ……。
ベッドに座らせた彼の胸に顔を埋めると、心音が伝わってくる。
海は生きている。
確かに生きている。
海は生きているんだ……。