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約束 ~禁断の恋人~
第4章  現実



 フィーアとの新しい生活。
 僕は規則正しいタイムテーブルを熟し、フィーアの学習に励んだ。
 料理とバイクについての学習は続けながら、他にも色々な本を与えてみた。
 情操教育にいいとされる幼児向けの絵本から、女性のヌードグラビアが載った成人男性向けの大衆雑誌まで。
 インターネットの扱い方も、チップの情報にある。それは基本的なもので、危険なサイトを避けるための操作方法。
 だからインターネットも自由に見せていた。
 課題を与え、それについて調べさせる。
 それらの感想を訊いてレポートにまとめるのは、それなりに楽しい作業だった。
 Dr.小早川には、毎日メールでフィーアについての研究結果を送っている。
 最初Dr.小早川はカイをフィーアと書く僕に驚いていたが、レポートの内容を読んで納得してきたらしい。
 フィーアの作った夕食をリビングで食べながら、ぼんやりとテレビの画面を眺めていた。
 画面の中では、僕の知らない芸能人達が馬鹿騒ぎをしている。以前だったらこんな番組は観ないが、フィーアの学習のために、色々な番組を観るようにしていた。
 意味も無く騒ぐ芸能人達。でも、それが彼らの仕事。目的は違っても、全ての仕事に意味があるはずだ。
「片付けてくる」
 空いた食器を持ってキッチンへ行こうとするフィーアに頷いてから、リモコンでテレビを消した。
「終わったら、感想聞かせて。レポートのための」
「分かった」
 自分の中では、気持ちの整理がついたと思う。
 カイを海にしたいと思ったこと自体、僕が狂っていた証拠。
 海と同じことを覚えさせても、“Z”は海にはならない。最初から、分かっていたはずなのに。
 僕は研究者として三体の“Z”と接してきたのに、海を助けたい一心で、大変なことをしてしまった。
 命。
 倫理。
 Dr.にとって、それは大切なはずなのに……。
 チップの移植をせず、脳死状態のままの海と暮らしていたら、どうなっていたのだろう。でもそれは“もしも”という仮定でしかなく、今の僕には想像も出来ない。



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