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約束 ~禁断の恋人~
第4章  現実


 キッチンから聞こえてくる、食洗器の音。
 今そこにいるのは海じゃない。
 カイでも無い。
 研究材料としてのフィーア。
 Dr.小早川が訪れた日以来、僕は彼をフィーアと呼び、彼は僕をDr.トモと呼ぶ。
 それは、“Z”には当たり前のこと。
 僕達は、Dr.と“Z”という正しい関係に戻っただけ。
 それ以上も以下も無い。
 彼は、僕が勝手に生み出した新しい命。見かけは人間でも、無機質なヒューマノイドとそう変わらない。
 Dr.小早川に昨日の研究結果を送らなければと思いながらも、何もする気になれず、その場へ座っていた。
 フィーアと二人切りの生活で、僕まで無機質な物になったように。
「海……」
 呟いてしまった。
 何日振りに言葉にしただろう。
 いくら呼んでも想っても、僕の海は戻ってこない。それは充分に分かっているのに……。
 夢の中ではいつも海と一緒で、目が覚めても、夢だとは信じられないくらい海の感触が残っている。
 海はそうやって、永遠に僕の中で生き続けていくのだろうか。
「海…………」
 もう一度口にすると、涙が零れた。
 どうしようもなく哀しくて切なくて、涙が止まらない。
「どうした?」
 海と同じ声で呼びかけられた。
 キッチンから戻って来たフィーアが、じっと僕を見つめている。
「どこか、痛い?」
 首を振った。
「じゃあ、カナシイ?」
 また首を振ったが、傍に来たフィーアの腕を、縋るように掴んでしまう。
「ごめん……。何でも、ないから……」
 すぐに手を放し、立ち上がろうとした。
「カナシイ時は、思い切り泣けばいいって、本で読んだ。オレには分からないけど、Dr.にも、ナヤミがあるんだろ?」
 フィーアの言葉に、余計に涙が溢れる。



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