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約束 ~禁断の恋人~
第4章 現実

以前テレビで観た映画について訊いた時、内容はすらすらと話す。でも感想は乏しく、楽しいや怖いなどと言ったことは無い。
「おやすみ……」
「おやすみ。Dr.トモ。明日も、いつもの時間に起こす?」
「うん」
頷いてから、自室へ戻った。
精神的に滅入っていて、すぐに睡魔が襲ってくる。何もかも忘れるように、僕はパジャマでケットにくるまった。
◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆
翌日も同じ。
夕食後に昨日のテレビについて訊くと、内容はしっかりと覚えている。出演していた芸能人の、顔や名前まで。でも感想はというと、フィーアは無言のまま。
面白いやつまらないなどの言葉も出ない。
幼児でさえ興味を持つ番組はあるのに、感情の面で“Z”はそれ以下。
「バイク……」とフィーアが呟く。
海の趣味だったバイクだから、それについての雑誌は読ませていた。昨夜の番組に、バイクについて話すシーンがあったせいだろう。
僕も、毎日のレポートが退屈になってきた。
覚えたことは、全て見聞きした内容だけ。そこからの発展は何も無い。
「セックス……」
「え?」
フィーアには、自由にテレビを観ていいと言ってある。昨夜僕が寝た後、ドラマでも観たのかもしれない。
「セックスは? もう、学習しなくていいの?」
「それはもう……。終わった、から……」
彼の記憶は無限と言ってもいいだろう。僕が教えたセックスは学習として残り、忘れはしない。
放出したんだから、気持ち悦かったはず。成人男性なら、セックスをしたいだろう。感情の無いフィーアなら、どんな相手でも抱けるはず。
僕を求めて言ったわけじゃない。
セックスについても訊いてみたかったが、その相手は自分自身。やはり、躊躇われる。
「今日のレポートは、以上だから……。フィーアは、22時まで自由にして。23時には、自分の部屋で寝るんだよ?」
「うん。分かった……」
いつものこと。いつもの言葉。
「じゃあ、おやすみ」
「おやすみ。Dr.トモ……」
それに頷いてから、僕は眠りについた。

