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約束 ~禁断の恋人~
第5章  変化


 考えながら救急箱を片付けた時、フィーアがリビングに来た。
「大丈夫?」
「平気だってば。それよりフィーアこそ、どこか痛くない? 顔色が悪いよ。診察するから、こっちに来て」
 頷いたフィーアを、プライベートルームへ連れて行く。
 彼は素直に、診察台へ横になった。
 顔色が悪いというのは嘘だが、ここ二、三日、彼の様子がおかしい。
 学習のために用意した本の内容を、殆ど覚えていなかったり。夕食用の肉を焦がしてしてしまったり。
 今朝は食後のコーヒーに塩が入っていた。さっき大皿を割ったのも気になる。
 普通の人間なら些細なミスだろうが、“Z”には考えられない。
 体温、呼吸、脈拍、心電図全てに異常は無かった。
 それ以上はここでは調べられないため、取り敢えずリビングへ戻る。
 ソファーへ座ろうとしたが、フィーアは立ったまま。
「フィーア? どうしたの?」
「オレ……。大きな鍋で、食事……。メシ、作ってた……」
「え?」
 遠くを見ているような瞳。何かを考えているようにも見えた。
 考えごとをしていたせいで、ミスが多かったのだろうか。
 でも、“Z”に考えごしなんて……。
「ここじゃない……。もっと、広い、場所……。人が、何人もいて……」
「それで?」
 海が働いていたのは、病院の調理部。行ったことは無いが、容易に想像出来る内容だ。
「ホリウチさん……。サクラさん……。ミサキ……」
「フィーア?」
「ケン……。それと、オレ……。同じ、チーム……」
 名前には、聞き覚えが無い。でも、何かがフィーアの中で生まれてきている。
 記憶……。
 チップを移植してから、今まで過去を思い出した“Z”はいない。
「フィーア……」
 その名前を口にしながらも、心の中では海と叫んでいた。
 調理部での記憶は、多分海のもの。フィーアは、このマンションから一度も出ていない。
 僕はフィーアをそのままにして、メモを取っていた。これ以上話しかければ、思い出すのをやめてしまうかもしれない。



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