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約束 ~禁断の恋人~
第5章  変化


 “Z”の語彙力は豊富なのに途切れ途切れに話すのは、自分でも分からない記憶のせいだろう。
 彼は今、戸惑っている。
 それは、感情の一つといってもいいだろう。
「四階の、五人……」
 それだけ言うと、フィーアは頭を抱えて膝を着く。
「もう、休んだ方がいいよ。僕は明日、出かけるから」
 彼の背中に手を当てて言い、自室へと促した。
 フィーアが自室へ入ったのを確認してから、僕は自室で以前撮った録画を観始める。
 それは、海が僕を撮ったもの。
 十分ほどだったが、海の声も入っている。
 知り合いから古い機器を貰ってきて、試し撮りをしていた。
 それは事故の朝で、僕にとっては、封印を解くようなもの。
 パソコンに入れると、再生が始まる。
『トモ。トーモ』
 ノックの音と、僕を呼ぶ声。
 フィーアも同じ声なのに、何故か懐かしく感じた。
『トモっ、おはよっ』
『Dr.桐島(きりしま)。診察のお時間ですよー』
 海のおどけた声。
『やめてよ……』
『大丈夫。トモは寝起きも綺麗だから』
 海の笑い声が入っているが、僕は別のことを考えていた。
『トーモっ! ホラ、起きろよ』
 録画は続いていたが、途中で切る。
「寝起きも、綺麗……」
 フィーアは、僕を綺麗だと言った。
 海と同じように。
 フィーアは、調理部の記憶が微かに蘇っている。それと同じように、僕を綺麗だと言っていたのを思い出したのだろうか。
 海は、いつも僕を綺麗だと言ってくれていた。
 初めて夜食を届けてくれた時も、『何でいっつも、つまんなそうな顔してんの? 綺麗な顔してるのに』と。
 分からない。
 フィーアが、知らないはずの海の記憶を持っている。
 そのためにも、確かめなければいけない。
 明日の準備をしてから、早めにベッドへ入った。



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