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約束 ~禁断の恋人~
第7章 想い
電子音が聞こえる。
地獄でも、僕はDr.なのだろうか。そんなことを思った。
元々天国も地獄も信じていないのに、こんな時だけそんな風に考えてしまう。
「朋也!」
父親の声に、やっと目を開けた。
真っ白な天井。それを遮ったのは、父親の顔。
「朋也……」
父親に呼ばれて、何故か涙が溢れた。
「海は……?」
「フィーアのことか……。彼も助かった。別室にいる」
安心したが、起き上がる気力もない。
父親が話しをしている。
僕の部屋に何か異常があると、父親の携帯が鳴るようにしてあった。それはマンションの管理人にも通知され、どんな異常かも分かるようになっている。
駆け付けた管理人によって、僕達は父親の病院へ搬送された。
警報装置を切り忘れた、僕のミス。
これは、僕の気持ちのミスから始まったこと。
海を生き返らせようとしたこと自体、狂ってしまった僕のミス。
僕には海しかいなかった。
海がいない世界なんて、生きている意味がない。
「朋也。どうしたんだ? 麻酔薬が検出されたから、事故じゃないだろう?」
「うん……」
海の肉体と一緒に逝きたかった。
移植手術をせずにいても、いずれはそうしていたかもしれない。
「フィーアが回復したら、整形をして、研究所に置くからな」
「それだけは、えっ!?」
起き上がろうとしたが、体が固定されている。
自殺願望のある患者が運ばれてきた時に、こんな処置をしておくのは知っていた。
目を離した隙に、装置を止めるかもしれない。点滴のチューブで、首を絞めるかもしれない。それを制御するため。
「お父さん……。もう、二度としないから。僕から、フィーアを奪わないで!」
あれだけつらい思いをしても、フィーアといたいと思った。
海の容姿を持ったフィーアと。
「“Z”は、お前の私物じゃないんだ……」
そう言うと、父親は病室を出て行ってしまった。