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約束 ~禁断の恋人~
第8章  未来



「おはようございます。海を、よろしくお願いします。僕は、仕ことがあるので」
 調理部の四階まで海を連れていき、メンバーに頭を下げる。
 順番に休みを取っているそうで、今日リーダーの堀内はいない。
 海がいない間は、休みも取れなかったそうだ。いつも募集はしているが、自然食品管理者という特別な資格を持つ者はあまりいない。
 海は、記憶喪失ということになっていた。
 それは事前に父親も診断書を作り、公共機関に提出済み。
 国から極秘の仕事を請け負っている父親なら、すんなりと通ってしまう。
 まずは週に二回、朝食と昼食作りだけ参加することにした。
 それだけでも、メンバーは喜んでくれている。気持ちのいい人ばかりで良かった。
 海の人徳もあるのかもしれない。
 僕がただ一人、生まれて初めて敗北を認めた海。
 今もそう。
 一度は僕のせいだが、二度も死にかけているのにこうして元気にしている。
「思い出せない時は、丁寧に教えて頂ければ助かります」
 メンバーみんなが、笑顔で歓迎してくれた。
「では、失礼します。海、昼過ぎに迎えに来るからね。行ってきます」
 そう言った途端、彼に頭を引き寄せられる。そのままキスをされた。
「海っ!」
「お二人って、そうだったんですかぁ……」
 美咲が真っ先に口を開く。
「トモは、オレの恋人。行ってきますは、キスだから」
 みんなも何か言っているが、恥ずかしくて耳に入って来ない。
 同性愛者は珍しくなくても、みんなが見ている前で。帰ったら、海にちゃんと言っておかなければ。
「失礼します……」
 急いでエレベーターに乗り、研究所へ向かった。
 今日の定例会議は、医療チームの棟。
「おっ、桐島。準備してきたか?」
 入口でDr.小早川と合い、笑顔で頷いた。
「海くんは元気か?」
「はい」
 元気すぎるほどだ。
 以前の僕のように、暇さえあればベッドへ誘ってくる。そのことは、Dr.小早川にも言えないが。



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