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約束 ~禁断の恋人~
第8章 未来
定例会議が始まり、僕の発言の番。
今日の議題は、今後の“Z”の学習について。
「彼らに感情を持たせるのに重要なのは、接する私達が、彼らに愛情を持つことだと思います。彼らを人間として尊重し、Dr.と研究材料という関係を改めてみてはどうでしょうか」
Dr.小早川が笑いを堪えているのは分かったが、僕は釣られないにして発言を続けた。
「名前も数字ではなく、人間に付ける物を使用したり。複数人を家族のように一緒に生活させ、お互いを意識させるのも一つの方法だと思います」
何人かが、頷いている。
「感情を学習させるのではなく、自然に感情が生まれるように促すのが、良い結果を生むはずです。生前に得意だった技能を探し、そこを伸ばすのもいいと思います」
今まで僕も、彼らを一体二体と言っていた。でも今日は、“Z”を人として話している。
“Z”は、人間だから。
「目的がどうであれ、研究者としての私が完成させたいのは、人工知能を搭載したヒューマノイドではなく、人間そのものです。脳神経外科チームでは、能を可能な限り残し、最小限度の切除で済む移植手術を目指します」
同意を示すたくさんの拍手を受け、お辞儀をしてから席に戻った。
隣からは、Dr.小早川の大きな拍手。
その後の会議が、僕の意見に沿ったものになったのは嬉しかった。
今日、合間の弁当を運んで来たのは賢。
僕と目が合うと、意味ありげにニッコリしていた。
カミングアウトする前に、噂で広まるかもしれない。それも構わないが。
食事休憩が終わると、今後の日程表が配られて解散。
顔見知りと挨拶を交わしながら部屋を出ると、Dr.小早川に肩を叩かれる。
「さっきの発表、良かったぞ。おまえの感情がこもってて」
にやけた顔に苦笑したが、周りにいた人達にも同意されて頭を下げた。
「ありがとうございます」
それは、色々な意味。
僕がチップを起動させたことは、他のメンバーに知られていない。それは、Dr.小早川が上手く取り繕ってくれたお蔭。