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第30章 choice A 恋慕

「その右手のマンションの前で降ろして下さい。」

「はい、かしこまりました。」

都心部の駅近にあるスタイリッシュなマンション。その前でタクシーがゆっくりと止まる。

「先、降りてて。」

「うん、ありがとう。」

見覚えのある建物。そう初めて会った日に訪れた彼の家。だけど、あの日とは全く違う今の二人の関係。

こんな風になるなんて、あの時は全く思ってもみなかったな…ふと、そんな事を思っていると、

「お待たせ。」

会計を済ませた啓介さんが降りてきた。

「ううん、ありがとう。半分払うよ。」

「気にしないで。」

「…でも、さっきも私がご馳走する予定だったのに受け取ってくれなかったし。」

「いいから。行こ？」

そう言って手を引く彼に連れられながら部屋へと招き入れられた。