この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
わがままな氷上の貴公子
第9章  ファイナル


 今までのオレは転倒を恐れ、無難に滑り切ろうとだけ考えていた。それは、減点を避けたかっただけじゃない。転倒することが、恥ずかしいと思っていた。
 どんな選手だって、僅かなタイミングのズレで転倒することはある。
 恐れずにチャレンジしなければ、先は見えてこないのに……。
 やっと実践出来た。
 “美少年フィギュアスケーター”なんて言葉に縋っていた、くだらないプライド。
 そんなもの、なくてもいいとさえ思えた。
 キスアンドクライに座り、カメラに笑顔で手を振る。
 前に置かれたティシュペーパーで汗を拭きながら、得点を待つ。
 鈴鹿は、笑顔で背中を叩いてくる。
 隣に座った振付師も、「今後は振り付けを考え直さないと」と笑顔。
 得点が表示された途端、場内にまた騒めきが広がる。
 シーズンベスト……。
 全体一位……。
 自分でも驚いて、表示板を見つめてしまった。
 演技中は、ただ必死。
 バックステージで考えたばかりの構成。それを無心で滑っていた。そんな状態で、転倒しなかったのは奇跡だろう。
 でもこれから練習を積めば、その奇跡も実績に出来る。
 鈴鹿と、振付師とも抱き合い、やっと実感した。
 まだ、オリンピックは確実じゃない。この後選考会はあるが、これだけの滑りが出来て満足だった。
「悠ちゃん!!」
 聞こえたような気がしたが、報告は今じゃなくてもいい。
 潤も、きっと喜んでくれているはず。
 立ち上がり、頭を下げてからバックステージへ向かった。


 ◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆


 バックステージでは、各国からの取材。今までより多いテレビ出演を終えた後、やっと家へ戻れた。
「ただいま……」
 母国開催は移動がなくて楽だが、その分すぐにマスコミ対応。
 海外の大会なら一晩か二晩空けてからの帰国で、時差によっては楽な時もある。
「悠ちゃん! お帰りっ!!」
 真っ先に走ってきたのは潤。
 ニコニコ顔を見て、安心した。
「悠斗。お帰りなさい。おめでとう」
 母親も笑顔で迎えてくれる。普段は仕事で、オレがどうでもいいわけじゃないのは分かっている。
 甘えたい年齢じゃないが、その存在はやはり嬉しかった。


/141ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ