この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
わがままな氷上の貴公子
第9章 ファイナル
50代には見えない、スッキリとした美人。オレより十歳上の兄貴と歩いていて、夫婦に間違えられたこともあった。
輸入服などを扱っているから、センスもスタイルもいい。頭も切れて、仕事も出来る。
そんな母親から、仕事を取り上げたいとは思わない。オレが、スケートを辞めさせられるのと同じだ。
ありがたいことに、オレは母親似。美少年と言われるのも、母親のお蔭。父親も格好いいとは思うが、顔は男らしく、がっしりとした体形。
「お帰りなさい。悠斗さん。食事の支度が出来てますよ」
和子さんも、オレにとって大切な存在だ。
気の利かないハウスキーパーだったら、毎日イラついていただろう。
「悠ちゃん、ご飯食べようよ。悠ちゃんの出てるテレビ観ながら、待ってたんだよお」
潤も相変わらず。
「おいっ!」
いきなり抱きかかえられ、ダイニングに連れて行かれた。
まったく……。
母親が見てるのに……。
「潤くんて面白いわね。よく食べるし。息子にしたいくらいだわ」
笑いながらの母親が、席に着く。
それだけはやめてくれ……。
オレの体がもたない……。
男同士の上兄弟でこんな関係だなんて、洒落にならないぞ?
食事が始まると、母親は潤の食べっぷりを楽しんでいる。
「和子さん。さっきのお肉、潤くんに焼いてあげて? 悠斗も食べる?」
オレはついでかよ……。
元々、そんなに食べないのを知っているからなのは分かるが。
「オレはいいよ……」
少しして霜降りのステーキが出されると、潤は目を輝かせている。
「いただきまーす!」
まあ、お前は大人しく食べてろ……。
「ねえママ、あっ……」
言ってから口を押さえたが遅かった。
「悠ちゃんて、ママって呼ぶんだあ」
「か、関係ないだろっ!」
子供の頃からのクセ……。
一緒にいることが少ないから、呼び方だけは幼い時のままになっている。
外では“母親”や“母”と言うが、家ではいつもパパとママ。
オレは育ちがいいせいだっ!
「誰にも、言うなよ……」
「うん。分かったあ」
そうは答えているが、こいつは鶏頭だからな……。