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わがままな氷上の貴公子
第10章 意地
驚いて目を開ける。
初めて聞く台詞……。
もう、それだけで構わない。
オレは今まで、自分のためだけにスケートを頑張っていた。自分自身が上へ行くために。
少しだけ、潤に喜んで欲しいから、と思うのも悪くない。
不特定多数のファンや、潤のため……。
そう思った方が、気持ちが楽になれる。
「潤?」
「なあに?」
体を離した潤は、ニコニコ顔。
「オレ、言われてないぞ……。えっと……。付き合って、欲しい、とか……」
「そうだねえ。悠ちゃん。俺と、付き合ってください」
「馬鹿……。遅いんだよ……」
オレの方から、逞しい体にしがみついた。
散々振り回された後の告白なんて、こいつらしい……。
そんな潤を、オレはいつの間にか好きになっていた。
後は、この言葉が欲しかっただけ……。
「悠ちゃん? 返事は?」
「分かってるだろ……」
「うん……」
もう、こいつのことで悩む必要はない。
どんなに怒鳴っても、離れていかないヤツ。そんなのは初めてだ。
「でも、暫くは、ヤらないぞ……」
体を離して言った。
「えー。何で? せっかく告白したのに」
潤の努力は認める。オレだって促してやった。
それでも今は、大切な時期。
次の大会が終われば好きなだけしていいと言ったら、潤は喜んでいた。
“好きなだけ”は、ちょっと言いすぎたかもしれない……。
「次の大会っていつ?」
「二ヶ月間後」
「えー。そんなに……?」
今度は落ち込んでいる。
「来月から、合宿だから……。今日、少しだけなら……」
オレも、潤が欲しいと思ってしまった。
すぐに潤が押し倒してくる。
「少しだぞっ!」
「うん。悠ちゃん……」
不器用に囁かれ、唇を合わせた。