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わがままな氷上の貴公子
第12章 開宴
それでも、箱の中には大量の板チョコ。
塔子と母親に少しずつ持って行ってもらおう。後は潤が食べるだろう。
こいつ……。
まだオレのことが分かってないよな……。
仕方ない。
潤はオレを、“普通の男”として見ている。
その方がいい……。
潤は、フィギュアスケーターとしてのオレが好きなわけじゃない。ただの“望月悠斗”として好きになったんだから……。
オレの家には貼らないと約束して、三種類のポスターにサインをしてやった。
寮にでも貼ればいいだろう。
「さあ。お食事にしましょう?」
母親の言葉で、全員がダイニングへ移動した。
食べながらの会話は多種多様。
スケートのことが多かったが、塔子は初めてのオレの母親に興味があるようだった。
「あっ。エビちゃんもおめでとう!」
ステーキを飲み込んだ潤が、思い出したように言う。
「潤くん!」
塔子は慌てた様子。
「賞獲ってないの、俺だけだあ」
「なにで賞を頂いたの?」
母親に突っ込まれ、塔子は困ったまま。
「漫画……?」
呟くと、塔子が潤を睨む。
それしか、オレには思い当たらなかったから……。
「言わないでって言ったでしょう?」
「ごめん。エビちゃん。でも、賞獲ったんだからいいじゃーん」
「塔子、そんなことしてたの?」
千絵もまだ知らなかったようだ。
「ん……。潤くんに手伝ってもらってて……。最初に会った時、パソコン得意だって聞いたから……」
こいつが、パソコン!?
オレも部屋にはあるが、協会に言われてブログを書くだけ。ブログのやり方だけ習ったから、それ以外は何も出来ない。
「漫画とパソコンが関係あるの?」
千絵が訊くと、塔子が頷いた。
「今は、殆どパソコンで描くの。背景処理とか、トーンとかも……」
オレには意味不明の単語ばかりだが、とにかくパソコンで漫画を描くことだけは分かる。
「どんな賞を頂いたの?」
「激励賞です……。でも、担当さんと一緒に、これから描いてみないかって、言われて……」
「凄いじゃん! 隠さなくてもいいのにー!」
千絵が言うと、全員が拍手をした。勿論オレも。