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わがままな氷上の貴公子
第2章 プライド
「望月!?」
鈴鹿の声の後その場で止まり、音楽もやんだ。
そのままリンクサイドへ戻る。
「どうしたんだ? 調子でも悪いのか?」
「いいえ……」
タイミングにミスはない。それなのに、ジャンプの瞬間腰に力が入らなかった。
あいつのせいだ!
昨夜のセックス……。
イライラの解消から誘ったのはオレだが、三回もヤるとは思わなかった。
上半身は脱がずに前戯も無くて、やたらとガシガシ突っ込むだけ。それで感じてたのは、否定しないけど……。
だからオレだって、自然と腰を使ってしまった。
その疲れのせいだ!
「昨夜家でトレーニングしてて。気合が入りすぎて、疲れてる、だけです……」
「それならいい。今日は、合同練習に出ろ」
「はい……」
鈴鹿は、赤坂のような熱血タイプじゃない。
頭を下げてからエッジカバーを着け、荷物を持ってエレベーターへ乗った。
四階へ降りると、通りかかったのは制服姿の千絵。一緒にいる塔子とは違う制服。
「あれ? 悠斗っ。個人練習はー?」
「終わった……」
千絵に話してもしょうがない。詳しいことまでは、誰にも話せないし。
頭を下げる塔子だけに笑顔を見せてから、更衣室へ行った。
ロッカーに荷物を入れてから、隅の椅子へ座って溜息をつく。
全部潤のせいだ……。
これでオレが調子を崩したら、責任取れるのか?
オレが誘ったせいだけど……。
考えていても仕方ないと、更衣室を出た。
ジャージに着替えた千絵が、もうリンクにいる。塔子はまたベンチに座り、全体を眺めている感じ。
「悠斗くん。滑るの?」
「ん。軽くね」
塔子には笑顔を向ける。
「千絵とは、違う高校なの?」
口調も、ファンに対してのもの。
「うん。中学校の時に一緒だったの。千絵は、スポーツ推薦で高校に入ったから」
そうだろう。
千絵が通っていたのは、公立の中学。フィギュアのトップでやっていくには、ある程度勉強を犠牲にしなければならない。
オレの学校は文武両道を謳(うた)っているが、スポーツでいい結果を出せば、大学までエスカレーター式。そんな環境じゃないと、海外遠征もあるフィギュアを続けていかれない。
「悠斗っ」
オレと塔子が話しているのを見たのか、千絵がリンクサイドに来た。