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わがままな氷上の貴公子
第2章 プライド
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その後バックからとまた正常位までヤりやがって……。
ベッドに俯せたまま、何度目かの溜息をついた。
脳ミソまで筋肉で出来てそうなお前と違って、オレはデリケートなんだからなっ!
いつもボーっとしてるクセに、何でセックスの時だけ張り切るんだよっ!
「悠ちゃんも俺が好きなんだね」なんて、勝手に盛り上がってろっ!
オレは、否定する気力もない。
「悠ちゃん。大丈夫?」
お前は優しく背中を叩いたつもりかもしれないけど、痛いんだよ。体格も体力も違うんだから。
三回もヤったんだから気付け!
「寮の門限があるから、今日は帰らなくちゃ……」
勝手に帰れよっ!
安心させてやらないと背骨を折られそうだから、腕だけを上げて手を振った。
「ごめんね。悠ちゃん。今度は、外泊届け出しとくから……」
何だよ。外泊届けって! 誰が泊まって欲しいって言った!?
大きな溜息をつく。
「悠ちゃん?」
すぐ上で声がして、仕方なく目を開けて見てやった。
「いいから……。帰れよ……」
「ん……」
何か言ってから潤が部屋を出て行く。
気怠い体を引きずるように、オレはシャワーを浴びに行った。
◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆
クラブに来たくなかったが、練習は休むわけにいかない。
それに、発表会のトリの件で落ち込んでいると思われるのも癇に障る。
今日は5階での個人練習。
リンクは貸し切りで、専任コーチの鈴鹿(すずか)と二人。
鈴鹿は元フィギュアスケーターで、オリンピック経験者。元祖美少年フィギュアスケーターと呼ばれ、30代半ばになった今もその面影を残している。
同じような滑りをする方がいいと思い、鈴鹿にコーチを依頼した。
ウオーミングアップをしてから、リンクの中央へ立つ。
練習用のリンクで客席はないが、発表会なんかよりシリーズ本番のことを考えてポーズをとった。
音楽が始まる。
フランツ・リストの“愛の夢”。組曲の三番部分。フリープログロムで使う曲。
軽いステップを入れながら加速していく。
最初のジャンプは、単独の4回転サルコウ。これが綺麗に決まれば、次への弾みがかかる。
そう思って跳んだ時、抜けるように2回転(ダブル)トウループで着地してしまった。