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わがままな氷上の貴公子
第2章  プライド


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 その後バックからとまた正常位までヤりやがって……。
 ベッドに俯せたまま、何度目かの溜息をついた。
 脳ミソまで筋肉で出来てそうなお前と違って、オレはデリケートなんだからなっ!
 いつもボーっとしてるクセに、何でセックスの時だけ張り切るんだよっ!
 「悠ちゃんも俺が好きなんだね」なんて、勝手に盛り上がってろっ!
 オレは、否定する気力もない。
「悠ちゃん。大丈夫?」
 お前は優しく背中を叩いたつもりかもしれないけど、痛いんだよ。体格も体力も違うんだから。
 三回もヤったんだから気付け!
「寮の門限があるから、今日は帰らなくちゃ……」
 勝手に帰れよっ!
 安心させてやらないと背骨を折られそうだから、腕だけを上げて手を振った。
「ごめんね。悠ちゃん。今度は、外泊届け出しとくから……」
 何だよ。外泊届けって! 誰が泊まって欲しいって言った!?
 大きな溜息をつく。
「悠ちゃん?」
 すぐ上で声がして、仕方なく目を開けて見てやった。
「いいから……。帰れよ……」
「ん……」
 何か言ってから潤が部屋を出て行く。
 気怠い体を引きずるように、オレはシャワーを浴びに行った。


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 クラブに来たくなかったが、練習は休むわけにいかない。
 それに、発表会のトリの件で落ち込んでいると思われるのも癇に障る。
 今日は5階での個人練習。
 リンクは貸し切りで、専任コーチの鈴鹿(すずか)と二人。
 鈴鹿は元フィギュアスケーターで、オリンピック経験者。元祖美少年フィギュアスケーターと呼ばれ、30代半ばになった今もその面影を残している。
 同じような滑りをする方がいいと思い、鈴鹿にコーチを依頼した。
 ウオーミングアップをしてから、リンクの中央へ立つ。
 練習用のリンクで客席はないが、発表会なんかよりシリーズ本番のことを考えてポーズをとった。
 音楽が始まる。
 フランツ・リストの“愛の夢”。組曲の三番部分。フリープログロムで使う曲。
 軽いステップを入れながら加速していく。
 最初のジャンプは、単独の4回転サルコウ。これが綺麗に決まれば、次への弾みがかかる。
 そう思って跳んだ時、抜けるように2回転(ダブル)トウループで着地してしまった。


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