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わがままな氷上の貴公子
第6章 本音
テレビでは、また昨日と同じ質問の繰り返し。
ファンへのメッセージと言われたから、「これからも応援よろしくお願いします」と笑顔で言っておいた。
練習より、精神的に疲れる……。
またテレビ局の車に送られ、やっとクラブへ来られた。
明日もまた、別のテレビ局の朝番組への出演。それに夕方は、雑誌のインタビューがクラブに来る。
オレは芸能人じゃない。
最初に注目を浴びたのはマスコミのお蔭だが、ここまで来ると鬱陶しくもなる。
今日の練習は、大会で加点を取りこぼした場所の復習。
優勝してもミスはある。
回転不足も一つ取られ、自分が思い描く演技じゃなかった。
コーチの鈴鹿は、オレが落ち込まないように褒めてくれる。オフシーズンは厳しい言葉もかけるが、シーズンに入ればメンタル面も気にするからだ。
また、回転不足を取られるんじゃないか。
今度は転倒するんじゃないか。
そんな思いでリンクへ立てば、プレッシャーに負けてしまう。
リンクは自分のためだけのステージ。
主役は自分。
観客は、全員自分の味方。
それくらいでないと、いい演技なんて出来ない。
自分が納得出来る完璧な演技をして、それでも負けるなら仕方ないだろう。その悔しさがバネとなり、新しいステージへとチャレンジする。
そうやって、オレもここまで成長してきた。
三歳から始めたのは、フィギュアだけじゃない。
ピアノと体操。クラッシックバレエと水泳。その中で、五歳の時自分で選んだのがフィギュア。
色々なことを経験させてくれた両親には、感謝している。
幼い頃母親に言った、『おうじさま』。
約束でも何でもない。無邪気な子供の頃の言葉でも、今は似たような位置にいる。
最高のレベル4が付いたステップシークエンスも、軸をもっとしっかりしたい。ジャンプだって、もっと高く美しく。
何もかも忘れ、練習に集中した。