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わがままな氷上の貴公子
第6章 本音
◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆
「おはよう」
部屋着に着替えてダイニングへ行くと、潤が朝食を食べている。
「あっ、悠ちゃん。おはようっ」
朝から元気だな。
……って。どうしてこんな早くからウチにいるんだ?
まだ五時だぞ?
オレは生放送のテレビ出演があるから、早く起きたのに。
「ゲストルームに泊ったんですよ」
和子さんが笑いながら、温野菜とチキングリルとフルーツを出してくれる。
「俺、一時限目からあるんだあ。一度寮に、鞄取りに戻らないといけないし」
ウチはいつからホテルになったんだ? こいつ専用の。
それも、潤は朝から大量のおかず。
肉野菜炒めに、肉巻き野菜。豚汁まである。
おかずは減ってるのに白米が大盛りなのは、もうお替りをしたからだよな?
何も言う気になれない。
「お友達はちゃんともてなすよう、奥様から言われてますから」
オレの表情で分かったんだろう。和子さんは笑いを堪えている。
もう好きにしてくれ……。
潤を見ていると食欲がなくなるが、体力維持にためにきちんと食べた。
身支度を整えてから大きな鞄を持ってくると、潤がボーっと見ている。
「何だよ……」
「綺麗だけど、制服じゃないね?」
「選手のブレザーだよ」
大会後のテレビ出演などは、決められたジャージかこのブレザー。品のあるオレには、ジャージよりブレザーの方が似合う。
「悠ちゃん。駅まで一緒に行こうよお」
「オレは迎えが来るから。お前は勝手に行けよ」
六時には、テレビ局からの迎えの車が来る。
それを言うと、潤は落ち込んだ様子。
そうじゃなくても、電車になんか乗れない。
一昨日の大会と昨日のテレビ出演は、日本中で放送されているんだぞ?
「えー……」
そんな情けない顔をしても、オレにもどうしようもない。
「悠斗さん。車が来ましたよ」
和子さんがインターフォンを取って言う。
「行ってきます。……じゃあなっ」
一応声をかけてやったんだ。それだけでもありがたいと思え。
外へ出ると、どこで家を知ったのか、ファンの女達も結構いた。にっこり微笑んでやると、「キャー!」という黄色い声。
これも営業の一部だ。
協会からも、ファンには出来る限り丁寧に接するよう言われている。
スタッフに守られながら、俺はワゴン車へ乗り込んだ。