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SS作品集
第5章 ベッド
その間もベッドからの「重いなー。重いなー」は続く。
最初は、腹が減っているのとベッドの声が気になって眠れない時もあったが、僕は逆にそれを励みにした。
痩せて、ベッドを黙らせてやる。そう思って頑張るしかない。
僕にとってはつらい生活を続けていると、半年ほどで慣れ、体重も80kgを切ったのだ。
「まだ重いなー。まだ重いなー」
今度はベッドがそう言うようになった。
今の僕にはそれも励みになる。「重い」から「まだ重い」に変わったのだから。少しはマシになってきたということだろう。
それからも僕は頑張り続けた。
昼食はソバ類にし、夕飯も魚中心の定食。そして、家でのビールもやめることに成功。飲むのはペットボトルの天然水。だが週末には、100%果汁のジュースをコップ一杯だけ飲む。
一週間仕事とダイエットを頑張ったご褒美。体にもいいし、それくらいは許されるだろう。
勿論、上司からの誘いも断るようにした。
上司の中には最初嫌味を言う人もいたが、アルコールをやめたことを話すと、殆どがそのうちに納得してくれたようだ。
そして、太るのにかかったのと同じ約2年後の今、僕は65kgになった。
体は軽いし、続けていた食事内容も苦では無くなっている。
相手から告白され、周りが羨むような可愛い彼女も出来た。
彼女にベッドが話すことは言っていないが、毎日、僕の健康志向に合ったお弁当を作って来てくれる。野菜と鶏肉中心だが、ハンバーグやグリルにしたりして、とても手の込んだもの。
週末はデートもする。最初は遠慮してカフェでコーヒーしか飲まなかった彼女も、僕が勧めるとたまにケーキかパフェなどを食べるようになった。
僕は元々甘党ではなくコーヒーはブラック派だから、それは本当に心配いらない。だがたまに、一口だけ食べさせてもらったりもする。デートで外を歩き回るようになったから、一口くらいはいいだろう。それ以上食べたいとは思わないし。