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SS作品集
第12章 カレンダー
5月が終わればまたカレンダーを正方形に切り、それを使う。折り紙も残っているが、僕には何となくカレンダーの方がしっくりくる。厚みが違うせいだろう。
大学の試験の為の参考書を買いに行った本屋で見つけたのは、「大人の折り紙」という本。
中をパラパラと見ると、立体的な難しそうなものもある。
僕はそれも買った。
やっと試験が終わり、成績も悪くはないだろう。これから長い夏休みだ。
僕は折り紙に没頭した。
「大人の折り紙」の最後にあったのは、大きくて長方形の紙を使うもの。カレンダーがピッタリだ。
6月のカレンダーを使い、3日間かけてそれを折り上げた時の充実感。
立体的な龍の形に、所々カレンダーの表が入り、いいアクセントになっている。
巻末をみると、作品コンテストの内容が書かれていた。この本にあるものでいいとあったから、僕はそれを応募してみたが、締め切りは間近。
コンテストに応募した後、僕はオリジナルの作品が作ってみたいと思い始めた。それも素材はカレンダーがいいが、まだ7月は終わらない。ホームセンターに行き同じような材質の紙を探して買い込んだ。
これで、もっと大きなものも作れる。夏休みは長いんだ。ゆっくりやる時間はある。
そんな時、知らない名前の会社の編集者だという男から、電話がかかって来た。
僕の出した龍が、大賞を獲ったと言われて、自分でも信じられない。あんな、カレンダーの裏で折ったものなのに。
だが相手はそれがいいと褒め称える。それは、次に出す「大人の折り紙2」の表紙になり、僕にも少しだが印税が入るそうだ。
そして電話の相手に、新作があったら見せて欲しいと言われた。
僕は了承し、今取り掛かっている別の形の龍に心血を注いだ。
本にあった、ただの龍じゃない。右手に玉を持っていて、大きく口を開けたもの。鱗だって、もっと数が多くて立体的。
仕上がったのは、1週間後。それも、仮眠だけを取る1週間。