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SS作品集
第19章 “夏”を探しに 風太
そこにあったのは、大きな花。ボクがいっぱいジャンプしても、届かない高さ。
思いっきり顔を上げて見ると、大きなお花はいくつもある。
初めて見たから、これが“夏”かな?
「“春”が来た」って言ってた時は、ポカポカで気持ちよかったのに。“夏”はあんまり気持ち良くない感じがする。
“春”を追い出して来た“夏”は、悪いヤツなのかな?
お家の人も、あんまり楽しそうじゃなかった。
でも、“春”の時とはお花が違う。下にあるお花も、初めて見る。
楽しい事もあるのかもしれない。
また熱くなってきたから帰ろうとしたら、知らないヤツがこっちを見てた。
ボクより少し大きいけど、「ワン」て言うヤツじゃない。
近付いてきたヤツは、ボクの体の匂いをクンクンしてる。ボクも少しクンクンしたけど、嫌な感じじゃない。
「僕はこの家のヒロだよ。君は?」
「風太」
ボクは元気よく答えた。ヒロは怖くなさそうだ。
「その首輪、僕と同じ赤だね」
「赤?」
「その色は、赤って言うんだよ」
ボクはまだ、黒しか知らない。お家の人が、ボクは黒いっていうから。
「じゃあ、あのお花も赤?」
花壇にあるお花を見ながら訊いた。
「そうだよ。大きいのはヒマワリで黄色。夏になると咲くんだよ」
ヒロは何でも知ってて凄い。
「風太はどこから来たの?」
「えっと。あっちの草のとこと車のとこを通って……」
「じゃあ、こっちの方が近いよ。おいで」
ボクはヒロの後を着いて行った。
「登れるよね?」
先に高い塀に載ったヒロに言われて、ボクは思いっ切りジャンプする。
「こっちだよ」
ボクはヒロの後を付いて行く。
「君はまだ1歳になってないよね? 僕は3歳。家の人に言われたから」
「えっと。イッサイ?」
「大丈夫。1歳になれば、家の人がお祝いしてくれると思うよ」
ボクにはオイワイも解らないけど、違う塀にジャンプするヒロの後を付いてった。