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光を求めて
第8章 知らないこと
「……は……ろは……いろは……」
誰かに名前を呼ばれて心地よい感覚が私を襲う。
ずっとその中から抜け出したくないような、そんな感じだった。
だけど夢の中の彼は私に起きろと言う。
幾度と見た夢の中の彼はあの頃と何も変わらず、優しくて大きな愛で私を包み込んでくれる。
「……羽……彩羽…そろそろ起きないと遅れるよ」
優しく髪の毛を撫でられ目を覚ますと、やっぱり大好きだった雅也が優しい笑顔でそこにいた。
「雅也……」
雅也に向かって手を伸ばせば、その手を取って優しく抱き起こしてくれる。
それが嬉しくて私からも背中に腕を回して甘えた。
「寝ぼけてる?」
「ふふふっ。そうかも……だって夢じゃなかったら雅也いないでしょ?」
雅也の胸に顔を埋めてスリスリしながら甘えると、髪の毛を撫でながらそうだねと優しく言葉を掛けてくれた。
大好きだった雅也の手は優しくて私を癒してくれる。
ずっと……ずっとこうやって夢の中で雅也に愛され続けたい、そうすれば知らない男と身体を重ね合わせることもなく私の身体が穢れることもない。
そんな事を思いながら、夢から覚めなければ良いと雅也に甘え続けた。
だけど夢は長く続くはずもなく、現実は厳しい。