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光を求めて
第8章 知らないこと
「彩羽、そろそろ起きようか?会社に送れるよ」
「会社?」
雅也の言葉に首を傾げた。
私が遅れるのは会社じゃなくて学校のはず……
雅也の一言でだんだんと現実が見えてくる。
今は何も知らなった学生じゃない……穢れてしまった大人の私……
夢ではないと思い出した私は、慌てて雅也から身体を離し距離を取った。
「顔を洗っておいで。朝食の準備はできてるから。早くしないと時間なくなるよ」
くすくすと笑いながら部屋を出て行く雅也の姿を呆然と眺めている事しかできなかった。
寝ぼけていたにしても最悪。
よりにもよって雅也に抱きついて甘えるなんてありえない。
だけど……変わらない。
優しさも、匂いも、全てあの時のままだった。
「彩羽!本当に遅れるから!!」
雅也の叫ぶ声で再び現実に引き戻され、時計を見ると家を出る10分前で慌てた。
リビングに行くと、テーブルの上にはパンとスクランブルエッグとサラダが用意してある。
せっかく作ってくれたのに申しわけないと思いながら、時間がないことを良いことに何も話しをしないまま家を出て会社に向かった。