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光を求めて
第1章 昼の顔と夜の顔

間接照明に照らされた店内にはジャズの音が優雅に流れ、それ以外は静かな夜だった。
カウンター7席、テーブル3席、奥にはビリヤード台と年代モノのジュースボックスが置かれた程良い大きさのバーは『maple‐メイプル』と光る電光掲示板を表に掲げ、50歳に近いマスターのゲンさんがひとりで開けている。
バーのマスターというのにジーパンにTシャツというラフな格好をして、ハイスツールに座っていると誰もマスターだとは思わない。
短髪に年の割には程良い筋肉がついた無駄のない身体は、昔、格闘技を習っていたらしく、今では格闘技はやってないにしても時間があれば鍛えているという。
そんな一見マスターに見えない所に親近感が湧き、週末ともなれば常連客で賑わっている。
今日は少し時間が早いせいか、私と知らない男がひとり、それぞれの時間を楽しんでいる。
まだ時間は早い。
もう少しすると、色々な男たちが入れ替わり立ち代わりと店に顔を出し、その中のひとりだけでも私を満たしてくれればいい。
今宵一晩だけの身体の関係……
私の身体を差し出す代償として、私の寂しい心を埋めてくれればそれでいい。
これが私……
何年も変わることができない、今の私の姿……


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