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光を求めて
第1章 昼の顔と夜の顔
男陣の言葉が重なり、私と清香姉さんは大笑して店内の雰囲気が一変する。
そして高橋さんはカウンターに肘をつき、私の髪の毛をクルクルと指に巻き取りながら甘い言葉をゲンさんに聞こえよがしに言う。

「でもさっ。彩羽ちゃんの胸も大きいよね~~。俺!彩羽ちゃんの胸がいいなぁ~。今日、誰も相手いなかったら俺なんかどう??」

高橋さんが言った言葉に雷が落ちないわけがない。
ちらっとゲンさんを見れば、ものすごい形相で高橋さんに二度目の雷を落す。

「彩羽に変なことするんじゃね――!!彩羽に手を出してみろ!!ただじゃすまね~からな!!」

今にも高橋さんに食って掛かろうとするゲンさんを見て常連客は笑う。
高橋さんの言葉が本気だとはゲンさん以外思っていない。
ただの言葉遊び……違うな。
ゲンさんの行動を分かった上での言葉で、ゲンさんのこの行動も想定内。

「ゲンさんの過保護ぶりも健在だよなぁ~。彩羽ちゃん。ゲンさんに愛されてるね」

「はははっ。それは否定しません」

私の言葉に店内は笑いの渦に巻き込まれた。
ただひとりゲンさんだけが何かを言いたげで、それでもどこかうれしそうなのはきっと私が笑っているから。
ここにいたら私は笑っていられる。
嫌な事を忘れ、ただひとりの東間彩羽として生きていける場所。
それがゲンさんのお店、maple‐メイプルだった。


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