この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
光を求めて
第22章 光に向かって
「あの時……私が死のうとした時、やっとお父様の気持ちが少しだけ理解できた気がしました。だけど、それからも溝は縮まらなかった。本当の父娘には戻れなかった。それが楓ちゃんの死と関係あるんじゃないですか?」
私の代わりに亡くなった楓ちゃん。
顧客名簿を守るために父が犠牲にしてしまった楓ちゃんの命。
その真相を聞いた時から、父が私に向ける態度の意味を何となく理解し始めていた。
だけど私は父の口から聞きたい。
じゃなければ、私と父は何も変わらない。
「……もう嘘は嫌です。私は全てを知りました。だから本当の事を教えてください。私はお父様の本当の気持ちを知りたい」
そう言葉にすると、父が顔を上げて私を真っ直ぐに見てくれた。
いつもお互いが視線を外し直視してこなかったけど、今は真っ直ぐに見つめあえている。
「その目が……その目が私は怖かった」
父は震える声でそう言って、再び視線を外し両眼を覆った。
その傍で母が父の背中を撫でながら寄り添う姿は、父の気持ちを母は理解しているのだと分かる。
それから父は教えてくれた。
どうして私に冷たく当たったのかを。