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微睡みの中で
第8章 微睡み。
──2年後。
沙耶香と共に過ごす選択をした俺は、あっという間に20歳になった。
『俺、莉奈ちゃんと付き合うことになったから…』
高3の終わり頃、翔馬から電話で報告を受けた。
一瞬反応に困ったが、その場ではちゃんとおめでとうと言えた。
当時はなんとなく…嫌とか、悔しいとかそういう気持ちとは違う、複雑な気持ちでなるべく普通に接していたつもりだが、翔馬と話すのが少し気まずくなっていた。
今まで翔馬に我慢させていた立場から、そんなこといえる立場ではないのも充分…分かっていた。
同じクラスだからどうしても会話はするのだが、それ以外では少し距離を置くようになった。
他の奴らも就活や受験勉強で、卒業式まで殆ど遊んだりやりとりすることが減っていった。
俺はというと、今までぼんやりと生きてきて、将来の仕事なんか何ができるか、何をしたいかなんか分からなかった。
とりあえずアルバイトからするか、なんて思いながらなんの進路も決めずに卒業し、その後すぐ、なんとなく目に付いたスーパーのバイトを始めた。
最初はバーテンダーなんかかっこいいな、大人になったら沙耶香と一緒に俺の作ったお酒を楽しむのもいいなあ、と、その様子をぼやあ…と想像したりしていた…が。
沙耶香との生活も優先したかった俺は、昼に働く沙耶香と生活リズムが違うと、絶対にすれ違いが起こると思い、バーテンダーを目指すのはやめた。
だからといっちゃなんだが、人と喋ったりするのは得意ではないけど好きではあったので「誰にでもできそう」っていう安易な考えでスーパーでバイトを選んだ。