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微睡みの中で
第6章 気持ち
ここまで孤独と常に向き合って人生を送ってたのかとすこしショックを受けた。
当の本人はどうってことない、と言った様子だった。
「…いきなりこんな話、そりゃコメントしづらいわよね。気にしないでいいわ、ただ少し聞いて欲しかっただけよ」
ポンポン、と頭を撫で、頬に軽くキスをされた。
俺は仕返しに唇に軽くキスをして押し倒した。
沙耶香はアハハ、と笑顔で俺を見つめた。
「こら、まだ朝よ?」
「…俺」
「なあに?」
「俺も…上手く言えないけど…頑張るよ」
「フフ、気にしてくれてるの?」
頬を両手で掴まれて、グイ、と沙耶香が俺の顔を引き寄せた。
綺麗な歯を見せて笑いながら、額をコツン、とぶつけたあとに、下唇に吸い付いた。
「気持ちは充分よ…でもね」
そう言うと、俺を押し上げて体を起こした。
「…私を押し倒すのはまだ早いわよ」
指でツンッと鼻を弾くと、ソファから降り、着替え始めた。
「ほら、聡も着替えて。日曜日なんだからどこか行きましょ」
「え?うん」
その日は丸1日ショッピングや映画を見たりと休日らしい休日を楽しんだ。
沙耶香をアパートの前まで送ると、ショッピング中に買った袋をひとつ俺に差し出した。
「これ、あげる。…昨日からかなり充実してたわ、とてもリフレッシュできた。ありがとう」
「こちらこそ。また連絡するよ」
微笑みながら頷く沙耶香を見て気持ちが満ちたまま、帰路についた。
寝る前、袋の中身を確認する。
そこには沙耶香と同じ、石鹸の香りのする女性向けの香水が入っていた。
俺はその香水を使わずに自分の部屋の机に飾った。
使うときっと、ずっと沙耶香のことを思い出して、頭から離れなくなってしまいそうだから。