この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
密室脱出 ~あなたは脱出できますか?~
第5章 Q 05「いくらなの?」
(前回の問い)
Q 04 隠したもの
「休息を勧める。絵画は、いい目の保養にもなるだろう。音楽に耳をひそめるのもいい。ゆっくりと憩うのもだいじだ。焦っても、見つからない。
本棚。机。倉庫のなか。
探すばしょは多いが、正解はすぐ分かるだろう。めの前にある。」
ソファーに座り直した美織が、文章を平仮名で書く。
きゅうそくをすすめるかいがはいいめのほようにもなるだろうおんがくにみみをひそめるのもいい。ゆっくりといこうのもだいじだあせってもみつからないほんだなつくえそうこのなかさがすばしょはおおいがせいかいはそうめのまえにある。
「めの前ってあるから、平仮名の、め、の前だけを読むと……。す、い、そ……う?」
「水槽あるじゃん! 凄いぞ、みお!」
四人がすぐに水槽に近寄ると、魚は入っていない。水草だけが茂っている。
「こういう楽しみ方もあるんでしょ? 魚は飼わないで、水草だけを鑑賞するの」
梨沙が拓也に訊く。
「確かに。アクアリウムって呼ぶらしいよ」
「これ、重くて動かないぞ」
奏汰が水槽を横から押すが、びくともしない。
水槽は大型の熱帯魚が飼育出来る程大きく深い。そこに水が入っていると、何十キロになるか分からない。
「確実に、みおよりは重いな」
「どうして私を例にするの?」
言いながら、美織が笑っている。
「美織。薬飲んだだけで、すぐ元気になるんだ。また謎も解いちゃうし」
梨沙が美織をチラリと見て、すぐに水槽に視線を戻す。
薬が飲めたし、手元にある事にも美織は安心した。勿論一番心配なのは、ここをいつ出られるのかだが、仲間内の結束も気がかり。
奏汰と拓也はぶつかり合っているし、梨沙と自分も今までと雰囲気が違う。美織はそれも不安だった。
美織の考えは当たっている。
拓也は、この四人でチームワークが保てるのか心配している。
奏汰はすぐ熱くなり、冷静な自分を疑うような暴言まで吐いた。梨沙は謎解きをしないし、美織は体が弱い。
奏汰もそう。冷静に話し合うのは、生徒会室だけで充分。美織はこの先も発作を起こすのが心配。謎解きをしない梨沙には不満を感じていた。
梨沙は梨沙で、謎解きが出来ないし取柄の無い自分に、みんなが不満を持っているのは分かっている。拓也はマイペースだし、奏汰は美織の心配ばかりしている中、自分の居場所の無さを感じていた。