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密室脱出 ~あなたは脱出できますか?~
第9章  Q 09「初めての競争」


 天井に、Qのシールが張られた封筒が貼り付いている。
 天井までは、3メートル以上ある。この部屋には何も無く、袋の中にも役立ちそうな物は無い。
「みお。乗れ」
 奏汰はしゃがんで美織を肩車すると言う。
 恥ずかしいが、美織も今は普通の状態ではないことを分かっている。からかったりする者など、誰もいない。スカートを押さえながら奏汰に肩車してもらい、天井に手を伸ばす。
「もうちょっと……。届かない……」
 奏汰は美織を降ろし、今度は梨沙を肩車した。
 美織より梨沙の方が10センチ近く背が高い。その分の重さも、奏汰にはそう関係なかった。
「取れたっ! やったぁ!」
 謎解きが苦手な二人のファインプレーのお蔭で、四人はQの封筒を手にする。
 梨沙は封筒から手紙を出し、広げて床へ置いた。それを四人で覗き込む。


Q 09 初めての競争
「4人がパン食い競争をした。その順位は?
拓也  僕は一位じゃなかったよ。
奏汰  拓也よりは早かったけど、二位じゃない。
美織  私は四位じゃなかった。
梨沙  美織には負けたけど、奏汰よりは早かったよ
自分の順位の数字の位置に立て。」


「オレには、ちょっと……」
「私も、こうゆうのはぁ……」
 奏汰と梨沙が気まずそうな顔をする。
「二人とも、気にしなくていいよ。封筒を取ってくれたんだし」
 拓也が言うと、三人が無言で彼を見つめた。
「え? 僕、何か悪い事を言った?」
 三人が考えていた事は同じ。少し前までピリピリしたオーラを出していた拓也が、急に柔らかくなった。だが、その心境も分からないではない。
 普段から仲の良かった四人が、ここに入れられてから綻び出していた。勿論それは誰が悪いわけでもなく、この異常な状況のせいだ。
 地下から抜けて少し気持ちが落ち着いた今、四人は反省しつつ、この先はもっとお互いを尊重し合おうと考えている。
「これは簡単だよ。順番に考えれば」
 拓也は、袋から筆記用具を出した。



 十章へつづく


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