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Aさん ~私を淫らにする人~
第10章 思いもしないことが
気を悪くした語気で言ってしまったけれど、それで石井さんに「あっ、ゴメン。これってセクハラになるのかな?訴えないでね」と言われて笑ってしまった。

それからリンゴ酒を口にして、その甘酸っぱさを転がしていると、私を目覚めさせたAさんの顔が浮かんでいた。

舌のキスや手淫にフェラチオ、食べ物を付けられて舐められた体の記憶、それらが私を男の人に興味を持たれる女に変えてくれたんだなと思った。

「そう言えば須藤から聞いたことがあるけれど、大田さんて恋愛に臆病で、朝の地下鉄で毎日見かけるオッサンにバーチャル・ラブしてるんだって」

「そんなこと・・・」

思いがけず自分の事を言われて私は焦ったけれど、それと同時に(あっ、この人は私をまだうぶな女だと思っているんだ)と確信した。
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