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Aさん ~私を淫らにする人~
第10章 思いもしないことが
そんな思いが私の中に悪の女優魂を目覚めさせて、失望させちゃいけない、この人は私を好きになるんだからと、何も知らなかった頃の自分を意識して表情作り仕草をした。

「ごめん、別にバカにはしてないんだ。ただ、もうそんなの止めたらって」

石井さんはそこまで言うと、マスターが向こうにいって離れていることを確認してから私の耳元に口を寄せて、「俺と本当の恋愛をしない。好きになっちゃったんだ、大田さんのことが」と言ってきた。

キュン!と心が絞まり、軽い目まいに‘恋愛’、‘好きになっちゃった’との言葉がメリーゴーランドのように回転した。

突然の告白を受けて、何をどう言って返していいのか分からない。

ただ曖昧な表情で「えーっ」と戸惑うだけで、それでようやく出てきた言葉は「でも、須藤さんが・・・」だった。
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