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僕の美しいひと
第7章 僕の美しいひと
その夜、郁未は久々に夜の街に出かけた。
…明日は清良の結婚式だった。

…何も、考えたくない…。
ひたすら酔いたい…。

ふらりと入ったバーで杯を重ねる。
ふと思い出すと、以前に訪れたことがあるバーだった。
…昔、こんなことがあったっけ…。
やや酔いが回り始めた頭で考える。

…鬼塚を喪ったと思い、辛くて遣り切れなくて、毎晩酒に溺れた。
出口のないトンネルをひたすら彷徨い続けていた…。
明けない夜に、嘆き続けていた…。

…そんな時に出会ったのは…。

「…相変わらず、やけ酒をなさる癖は直らないのね。
困ったお坊っちゃまだわ…」
…蠱惑的な香水の薫り…やや、ハスキーな甘い声…。
白くほっそりとした美しい手が、郁未の手から杯を取り上げた。

はっと見上げる先に…懐かしくも艶めいた美しい貌があった。
「貴和子さん…!」
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