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魚の骨
第6章 酸欠
喉を鳴らす音が頭に響く。生唾を飲み込む行為を単調なリズムで繰り返してるようだった。赤子が乳を夢中で飲むように口移しはお互いの信頼で成り立った。
少しでも隙間が空いているとジュースが溢れてしまう。
それは少しの嫌なことや不愉快なこともあってはならないことを指していた。

わざわざ彼の口に一度ジュースを含ませてそれを飲みたがる女は世界で私だけならいいのにと思った。
元々とろみがあるジュースは彼の唾液と混じり粘り気があった。粘り気のあるジュースがただの唾液になるまで舌で舌を探っていく。左右に動かすたびわざとらしい音が耳にへばりつく。

正直のところ頭がズキズキ痛みが増しているにも関わらず、股間からは止め忘れた蛇口のように水が流れ続けている。あと3度ほど飲ませて欲しかったが、口移しの儀式はきっと1度しか出来ないと思った私は頭痛を忘れたことにしてとにかく水を塞いでほしいと彼の身に体を寄せた。

最後に高熱が出たのはいつだろう。
視界が曇り、口で息をしないと間に合わない頭痛とぐっしょりとした汗にまみれながら、気だるい動きで唇に辿り着き「いきたい」一心で最後の力を振り絞り彼の体にしがみつく。
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