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堕落の絵画 調教の目覚め
第3章 絵画と雌の発情
絵に集中していると、日頃のストレスや雑念は感じない。
懐かしい。学生の頃はよく1人で、来て夢中で鑑賞していた。

「これは確か、聖……」
「聖アンデレの殉教だね。磔の十字架がバッテンの形をしているのは、キリストと同等の者として扱われるわけにはいかないと本人が望んだらしいよ」
よどみなく言葉が出てくる。本当に詳しい。

「今日、ここに来て本当に良かったです」
「それなら良かった。僕のことは気にせずゆっくり観ていくといいよ」
「ありがとうございます、綾野さん……あ、あっちの絵は何だろう」

それぞれの作品を順番に観ていく。そんな中、摩耶子はある絵に釘付けになった。


裸の男性が薄い布で陰部を隠し、後ろ手に鉄の手枷をはめられ拘束されている。
その横には、薄汚れた男性と対照的な、赤いドレス姿の美しい女性が描かれている。
女性は胸元をはだけ、片方の乳房を男性に差し出している。
男性は何かに取り憑かれたような目つきで、女性の乳首を貪っていた。

『ローマの慈愛』(キモンとペロ)と題されたこの絵画の光景は、あまりにも異様だ。
この奇妙なシーンを目にした途端、電流のような甘い刺激が摩耶子の身体を貫いた。

若い女の乳房を一心不乱に貪る、繋がれた男。
薄暗い独房のような場所で繰り広げられるその行為に、とてつもなく背徳的な何かを摩耶子は感じた。
はだけた胸元の柔らかな乳房と、男の口元でそそり立つ乳首。
ルーベンスは2人の肌の質感までリアルに描いている。


見れば見るほど摩耶子の身体は熱を帯び、妙な汗が流れ出る。
これは一体、何を描いた絵画なのか。解説には次のように書かれていた。

『1612年頃 ルーベンスが描いたこの油彩は「ローマの慈愛(Roman Charity)」と呼ばれる物語を描いたもので、娘による父親への献身的な愛を象徴している。
餓死の刑に処された父親キモンの居場所を探し出した娘ペロは、死ぬ寸前の父に自らの母乳を与えた。この献身的な行為は看守の心を動かし、父親は解放された』

生死に関わる緊迫した状況を描いたこの絵画は、背徳のエロスに溢れていた。
父と娘という禁断の関係が、2人の行為の淫猥さに拍車をかけている。

男の腰布に隠れた部分のイメージが脳裏に浮かび、慌ててかき消そうとする。

(何、この感じ……)
下腹部に奇妙な火照りを覚えた。

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