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MILK&honey
第5章 名前、呼んだら駄目?

「余計なお世話、ありがとうございます。大丈夫です、帰りますから」
「るり……」

 姫ちゃんが、泣きそうになる。
 二人で静かに待ってたのに、俺が声掛けたから、険悪になってしまった。
 ……うん。思い切って、余計な口出しの責任を取ろう。

「二人で、ウチで待ってる?」
「えっ……」
「えっ!」
「ここにずっと居るのも気が引けるでしょ?巧に連絡しといて、帰ってきたら迎えに来て貰ったら良いよ」
「でも……」
「そうしなよ!それが良いよ!」

 るりちゃんの腰が引けて、姫ちゃんが嬉しそうになる。

「なんで賛成するのよ」
「え?……この人、るりとお兄さんの名前呼んでたよね?知り合いでしょ?」
「知り合いは、知り合いだけど……変な人かもしれないじゃない」
「え?……多分、大丈夫だよ?なんとなく、良い人そうだし?」
「信じてくれて、ありがとう」

 姫ちゃんにお礼を言うと、にこっと笑った。
 良い子だなあ。
 ちょっと……いや、かなりぽややんとしてるけど。

「良かった!じゃあ、るり一人で待ってなくても……えーっと、お名前何ですか?」
「あ、ごめん。光。松森光です」
「光さんですね!光さん。るりを、よろしくお願いします」
「え。もしかして帰るの、姫ちゃん」
「え、待って」

 るりちゃんは慌てて立ち上がってなぜか振り向いて、それから姫ちゃんの方を見た。

「それなら私も一緒に」
「……るり?」
「何」
「だめだよ。せっかく、来たんでしょう?ちゃんと、お兄さんに話さなきゃ」
「ヒメ……」

 姫ちゃんは少し淋しそうに微笑んでるりちゃんの頭を撫でて、るりちゃんは一瞬顔を歪めた。

「また、明日ね。学校で」
「……うん。ありがとう、ヒメ」

 姫ちゃんはうんうんと頷いて、手を振って帰って行った。

 実は、にこにこして手を振って帰って行った姫ちゃんは、歩いて三分の筈の地下鉄の駅に行き着けなくて、迷子になるのだが……。
 それは、また別の話だ。
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