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遅すぎる初恋
第8章 酔う
「……もしもし」

『和哉さん、今日はごめんね。連絡も遅くなっちゃって』

「……いや、それは別に。俺よりも部長との用事を優先するのは当たり前だろうし」

『それはそうだけど、うちにおいでって約束したのに、ずっと連絡できなかったから』

紫音と電話で話すのは初めてで酔ってるのもあるからか、外だっていうのに変な気分になってくる。

「ホント、もう大丈夫。声、聞けたし……」

『え、和哉さん、どうしたの? そんなこと言われたら、すごい嬉しいんだけど』

電話越しで紫音の照れたような声を聞いて、自分の言ったことを思い出すと、すごい恥ずかしくなった。
な、何言ってんだ、俺は!?
ダメだ。酔ってて頭が回んねえ。

「いや、なんか、酒飲みすぎて、酔ってんのかも」

『お酒弱いかと思ってたのに。一人で飲んでるの?』

「え、あ、えと……と、友達……」

佐伯さんからの言葉が頭の中をグルグル回って、少し後ろめたい。
俺は紫音とつきあってるわけじゃないし、隠すことはないけど、会社の同僚に一々告白してきた相手のことを話す意味もないと思った。
何でこんな気持ちになるんだよ……。

『ふぅん。友達ね。あのさ、和哉さん。オレは和哉さんのこと本気だから、何があってもそれだけはわかって』

紫音が突然言い出したこの言葉の意味を俺はまだ知らない。
ただ、酒が入りすぎたせいで、おかしくなったんだ。

「……だったら、迎えに来いよ。紫音に会いてえ」
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