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お良の性春
第2章    春風乱舞 恋のつむじ風
 それから一月ほど経って、伊兵衛のもとに早川様から使いが来た。
 「願いの儀」があるという。
 使いの口から伝えられたその願いとは、早川家の嫡男源一郎とお良の縁談だった。
 伊兵衛は、思わず頷いた。

 (なるほど、源一郎殿の悪ふざけは、お良に惚れてのことか)

 早速、お良を呼んだ。

 「どうじゃ」

 お良は静かに父の言葉を聞いた。

 「嬉しゅうございます」

 鈴のような声でお良は答えた。
 そんなわけで、縁談は瞬く間にまとまり、お良は、喜多川家の養女に。その上で、早川家に嫁ぐことになった。

 縁談が決まり、今日はお良と源一郎の顔合わせの日。
 お良は緊張しまくっていた。あの日以来の源一郎との再会。
 カルタ会の大騒動。
 お寺での衝撃のプロポーズ。
 そして縁談。

 お良はこの縁談があの日見た夢の続きのように思えた。

 それとともに、源一郎の言う「責任」とは、このことだったのかと、改めて源一郎を見直した。

 「素敵な人。男の中の男だわ」

 源一郎と会える。嬉しい。お良は身も心も軽かった。
 源一郎も嬉しかった。美しいお良に会えるのだ。それだけで源一郎は幸せな気分だった。
 お良を前に源一郎は、優しく語りかけた。
 それはあのカルタ会の大騒ぎへの懺悔の告白だった。

 己の欲望の暴走を源一郎は素直に詫びた。
 お良は黙って聞いていた。そしてすべて許し、すべてを忘れた。
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