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お良の性春
第2章    春風乱舞 恋のつむじ風
 碁を打ち終え、城を後にした仙太郎は、一旦屋敷に帰るとお栄を呼んだ。

 「喜多川の屋敷に参る。そなたも同行せよ。酒でも一本もって行くか」

 お栄は一升徳利にスルメを包むと彦三に持たせ、三人は連れ立って喜多川家に向かった。

 「義久殿は」

 「居りますが、何か」

 「折入って頼みたいことがあってな」

 妹・お梅の夫、喜多川義久は仙太郎の部下。勘定方の仕事を実質取り仕切る財政のプロであった。

 「義兄上、嫁子の教育ならお梅が適任。見なされ、話を聞いただけで、やる気満々」

 一通り話を聞いた義久は大喜び。

 「なるほど、そなたも日頃からお梅のしごきに手を焼いておるな」

 「ご指摘の通りにございます」

 二人は大声で笑った。
 お梅も嬉しかった。あの可愛らしい甥の源一郎が嫁をもらう。早く嫁の顔が見たいものだ。

 「うわさには聞いておりますが。町一番の器量よしとか」

 お梅の言葉に、お栄の顔にも笑みがこぼれる。

 「早くあわせてくださいね」

 「なんと、嫁子はそんな器量よしか。源一郎も隅に置けぬ。さすが義兄上の血を引いただけはある」

 義久は「舌好調」。

 「兄上、話の続きは頂いたお酒でも飲みながら」

 そう言ってお梅は席を立った。
 その夜、膳を囲んだ四人は今後の段取りを酒の肴に、夜のふけるのも忘れて盃を重ねた。
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