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お良の性春
第1章    好色歌留多 裸地獄
 まず、男が対戦相手の娘をくじで決める。
 名前の記された札の入った箱から一枚引き抜くと、名はお松とある。今度はお松が相手の男の札を引く。
 対戦相手は一之進だ。一之進は学問所きっての秀才。
 二人は、並べられたカルタの前に立て膝に座ると、読み手の声に耳を澄ます。広間には緊張が走る。

 「あまつかぜ くものかよひぢ ふきとぢよ 」

 源一郎がなかなかの美声で上の句を読み上げる。下の句は「をとめのすがた しばしとどめむ」だ。
 とそのとき、一之進の右手が、まるで刀でも抜くかのように素早く動いて一枚の札を飛ばした。

 「あああああ」とお松が悲鳴を上げる。
 「さあさあ」と男どもが囃す。

 促されお松は、その艶やかな帯を解き、着ていた袷(あわせ)を脱いだ。
 袷の下には、これも艶やかな長襦袢。

 「兄上、もう、怨みます」

 そう言うお松の声が、また可愛らしく広間に響いて、カルタ会はいやが上にも熱を帯びていくのであった。

 「では次を」

 その声に、先ほどの勝者一之進が女の札を引く。

 「お良さん」

 (来たわ)お良に緊張が走る。だが、カルタは得意だ。
 (大丈夫)そう己に言い聞かせてお良は席につく。
 たとえ相手が誰であっても負ける気はしない。
 今度はお良が男の札を引いた。清三郎とある。
 「まずい」
 と清三郎が声を上げる。

 「お良さんが相手か」

 戦う前から、清三郎は負けたような顔をしている。
 カルタの前に座ったお良は落ち着いていた。
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