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お良の性春
第5章  波乱万丈 若後家 恋の旅立ち
 越後屋の台所はいつにも増して賑やかだった。
 きのう、突然現れた若旦那の新しい花嫁の話題で台所は朝から持ち切り。
 かしましい女中の噂話に手代や丁稚も加わっての大騒ぎ。
 近々若後家が来るとは聞いていたが、こんあに早いとは思いもしなかったのである。

 「おい、ハチ、お前、桶の水を運んだそうだな」
 「へえ」
 「見たかい?」
 「見たよ」
 「どうだい?」
 「桶の水で足を洗ってた」
 「そんなことは分かってらぁ。どんなお顔か聞いてんだ」
 「顔は見なかった」
 「役立たずな小僧だ」
 「それがね、熊さん、桶の水で洗った足があんまり白いんで、見とれっちまって」
 「へー・・・。小僧のくせしやがって、目の付け所が、お前助平だ」

 「お福さん、銭湯に案内したんだろう。どうだった?」
 「何がさぁ」
 「決ってらぁ、どんな体つきだったか聞いてるんだよ」
 「付いてる物はみんな同じだよ」
 「そりゃそうだろうが、その形とか大きさとか違いがあるだろう」
 「それがね・・・。内緒だよ」
 「そういわずに」
 「そのうち見りゃあ分かるさ」

 と、こんな調子である。
 そこへ、女中に案内されたお良がスッと入ってきた。
 一瞬、台所はシーンと水を打ったように静まり返る。
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