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お良の性春
第5章  波乱万丈 若後家 恋の旅立ち
 一方、お良は朝起きると部屋を片付け、身なりを整えた。
 旅の汚れを銭湯に流し、一晩ぐっすり寝て、疲れも癒えた。
 だが、まだ清兵衛の顔を見ていない。

 (どんな人かしら)

 顔を見るのが怖いようなうれしいような・・・。 
 そこに小走りで廊下を来る女中の足音。

 「女将さんがお呼びです」

 その声に、お良は緊張した。
 
 なんともいえぬ胸のときめきを抑え、女中の案内でお良は茶の間に入った。
 上座に並んで座るお春と清兵衛の姿が目に飛び込む。
 それまで騒々しかった台所が一転静まり返る。
 お良もいささか戸惑って足を止める。

 「お前さんの席はこっちだよ」

 お春が手招きして、清兵衛の横を指した。

 「おはようございます」

 お良は一言挨拶すると、背筋をピンと伸ばし静かに歩いて上座に向う。
 二人の前に座ると三つ指ついて深々とお辞儀をした。

 「初にお目にかかります。お良と申します。昨夜はお言葉に甘え、挨拶もせず休ませていただきました。不束者ではございますが、宜しくお願いいたします」

 お良の鈴のような声が、静まり返った茶の間に響く。

 「清兵衛です。疲れは取れましたか、お良さん」
 「はい」

 返事をしてお良が顔を上げると二人の視線がピタッと合った。
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