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お良の性春
第5章  波乱万丈 若後家 恋の旅立ち
 隅田川に出ると清兵衛は吾妻橋を渡った。

 「源一郎さんはどんな人でした?」

 橋を渡ると清兵衛が突然声を掛けた。
 お良は、隅田川のはるか川上に連なる山を指差した。

 「死んだ夫のことは、あの山の向うに置いて来ました」

 お良は旅の途中、峠を越えるたびに古里の空を振り返った。
 山波の上に広がる空の彼方に、源一郎との想い出を一つ一つ残して来たのだ。

 明日は祝言。

 (祝言が済めば、今度はこの人に抱かれる)
 
 前を歩く清兵衛の姿を見ながら、お良の胸は早くも時めくのであった。

 少し川岸を上がって言問橋まで来る。

 「お良さん、団子がいいか、それとも桜餅がいいか」

 お良はふと、早川家の庭の大島桜を思い出した。

 「わたし、桜餅が食べたい」

 普通に歩けば半時ほどの道のりをのんびりと一時近く掛けて歩いて来た。
 あちらこちら寄り道しながらの下町見物。
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