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お良の性春
第5章  波乱万丈 若後家 恋の旅立ち
 越後屋の若旦那の後添えの噂は、瞬く間に街中の評判になっていた。
 店先から現れた二人の姿を一目見ようと、隣近所から人が飛び出して来る。

 「若旦那、おめでとうございます」

 隣のうどん屋のカミさんが声を掛ける。

 「ヘイ、お良です。お世話になります」

 返事をする清兵衛の腰は低い。

 「いいと天気だ。これからお出掛けかい。羨ましいねえ」

 今度は呉服屋の主人が声を掛ける。

 お良はうれしいやら恥ずかしいやら・・・・。

 (それにしても、人通りの多いこと)

 見るもの聞くもの、何もかもが珍しく、行き交う人の群れに、お良の足どりはどこかそそくさとして覚束ない。

 「ところでお良さん、好き嫌いはあるかい・・・」

 振り返った清兵衛がお良に声を掛ける。

 「いいえ、ありません」
 「そうかい。そりゃァよかった」
 「どこかでお祭りでもあるんですか、ずい分賑やかですけど?」
 「これぐらいの人通りはいつものことです」
 「へぇーっ」

 お良の驚く声を残して、衆目に追われながら二人の姿は雑踏に消えていった。
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