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フリマアプリの恋人
第4章 芍薬の涙
…雨は、黄昏れ時にようやく上がった。

食堂の窓を開け放ち、美しい茜空と刻々とその青の色を変える穏やかな凪た海を二人で見つめた。

…別れの時が近づいていた…。
澄佳は柊司の肩に頭をもたせかけたまま呟く。
「…もう…帰らなきゃ…」
「…まだ大丈夫だよ。
海ほたるを使って東京まで2時間ちょっとだ」
澄佳の肩が愛おしむように、抱き寄せられる。
「だめよ。都内が渋滞していたら、もっとかかるわ。
…柊司さんを疲れさせたくないの」

…でも、本当は離れたくない。
まだ、側にいて欲しい。
…いや、ずっと…側に…。
…いつの間に、こんなに貪欲になってしまったのだろうか…。
柊司への恋慕の想いが募りすぎて、哀しく切ない…。

澄佳の心を読み取ったかのように、柊司が答える。
「まだ、大丈夫だ。
…というか、僕がまだ帰りなくない。
…澄佳さんの側にいたい。離したくない」
そのまま強く抱きしめられ、顎を引き寄せられる。
「…柊司さん…」
…もう、すっかり馴染んでしまった男の口づけ…。
馴染んでも、もっともっと欲しかった…。

…どうしよう…。
このひとを、こんなにも愛してしまった…。
澄佳は後悔すらしていた。

…都会の洗練された知的で成熟した男性…。
まるでロマンス小説に出てくるような美しく完璧な男性…。
何より、その温かさと優しさに惹かれた…。
そんなひとと自分の人生が重なるなんて、信じられなかった。
だから美しい想い出だけできればいいと、自分に言い聞かせていた。

…けれど、今やもう彼と離れることを考えただけで、心に大きな穴が空いたように寂しく辛い…。

…だから、嫌だったのだ…。
もう、本気の恋などしたくなかったのに…。
…でも、柊司さんはあのひととは違う…。
違うと信じたい…。

「…もっと…もっと…キスして…」
潤んだ瞳で見上げ、囁く。
「…澄佳…」
澄佳は溢れそうな涙と想いを封じ込めるために、男に口づけを乞い続けた。


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