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フリマアプリの恋人
第4章 芍薬の涙
柊司を送るために、店の外に出る。
…空には一番星が輝いていた。

二人は無言で夜空を見上げた。
「…綺麗ですね…」
…身体を交わしても、時折敬語で話す男が愛おしい。
「…ええ、本当ね…」

…時がこのまま、止まってしまえばいいのに…。
星ではなく、傍らの背の高い男を見上げてしまう。

ゆっくりと、柊司の視線が澄佳に移る。
…温かな温度の穏やかな眼差し…。
そっと、澄佳の頬に大きな手が触れる。
「…来週末、また来ます。
…いい?」
…胸がはち切れそうに嬉しさが溢れる。
直ぐに頷く。
…けれど、遠慮勝ちに口を開く。
「…でも…私、お店が…」
さすがに二週続けて休業にする訳にはいかない。
柊司は朗らかに笑った。
「もちろんです。
澄佳さんはいつも通りにお店をやって。
…実は次に出す本の原稿の締め切りが近くてね。
良かったら澄佳さんの部屋で仕事をしていてもいいですか?」
ほっとしたのち、喜びが満ちてくる。
「ええ、私の部屋で良かったら…自由に使って…」
…でも…
「…柊司さん、今週もお忙しかったんじゃ?」
…今週も…先週もこんな田舎の海の町で過ごさせてしまった。
大学教授の仕事は澄佳にはよく分からないけれど、調べ物や…執筆や研究など多忙なのではないだろうか。

「大丈夫ですよ。僕が来たくて来ているんですから…。
じゃあ、決まりだ。来週金曜の夜にまた来ます。
澄佳さんが仕事中は、僕も仕事を頑張ります」
戯けたように言う柊司が愛らしい。
「はい!嬉しい…!」
つい子どものようなはしゃいだ声を出してしまった。

恥ずかしくて俯こうとする澄佳の貌を優しく捉える。
「…大事なことを言い忘れていました」
「はい?」
柊司の涼しげな端整な瞳が、真っ直ぐに澄佳を見つめる。

「…愛してる…。澄佳…」
驚きのあまり、息が止まる。
「…愛しています。
…貴女をこれからずっと大切にします。
…だから…僕と結婚してください」
「……」
澄佳の身体がびくりと震えた。
…今、なんと言われたのだろうか…。
幻聴か…幻なのではないか…。
俄かには信じがたい言葉が、柊司の口から発せられたからだ。
強張る澄佳の貌を優しく包み込む。
「…貴女を片時も離したくない。一生を共に過ごしたい。
結婚してください。澄佳さん」
幻ではない…柊司の真摯な言葉が、再び澄佳の耳に真っ直ぐに届いたのだ。


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