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フリマアプリの恋人
第4章 芍薬の涙
柊司の車のテールランプが闇夜に溶けて消えるのを、澄佳はいつまでも見送った。
小さな赤い灯が視界から消えると、世界に一人取り残された子どものような気持ちになる。

…背後で砂利を踏む音が聞こえた。
振り返った先には、発泡スチロールの箱を抱え憮然とした表情の涼太が佇んでいた。
「…涼ちゃん…」
「明日の魚を持ってきた。良い烏賊とサザエもな」

涼太の貌を見た途端、緊張が一気に解ける。
「…涼ちゃん…」
近づきながら、わざと揶揄うように笑いかける。
「なんて貌してんだ。
…せっかくプロポーズされたのによ」
その太くがっちりした指で澄佳の額をちょんとつつく。
…涼太を前にすると、小さな八歳の少女に戻ってしまう自分がいた。
「泣くな。…良かったじゃねえか。
…あいつ、俺が思ったよりずっといい男だったな。
貌と頭だけのスカした野郎だと思ってたんだけどよ」
「…涼ちゃん…」
ポケットからくしゃくしゃのタオルを取り出し、澄佳に押し付ける。
優しい言葉と共に…。
「泣くなってば。…あいつのこと、好きなんだろう?」
くしゃくしゃのタオルでごしごし涙を拭く。
「…うん。…大好き…」

切ないような…けれど柔らかな笑顔で涼太が語りかける。
「なら迷うことはないだろ。
…片岡のクソ野郎とのことは、もう終わったことだ。
第一、お前は何も悪くはない。お前が引け目に思うことは何もない」
「…涼ちゃん。…でも…」
温かな大きな手がくしゃりと澄佳の髪を搔き回す。
「幸せになれ、澄佳。
…幸せになっていいんだ。遠慮するな」
「…涼ちゃん…」

引き締まった男らしい褐色の貌がにやりと笑った。
「アドバイス代。明日の昼飯お前の奢りな」

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